『仮名手本忠臣蔵』

先日、春夏秋の3回に分けて通しで演じられた『仮名手本忠臣蔵』十一段全段を鑑賞し終えた。1.jpg
全段で10時間は越えている。庶民の喝さいを浴びた、これだけの作品をよくぞ江戸時代に作ったものだと感心した。8.jpg

この『仮名手本忠臣蔵』は、僕にはとても意義あるものだった。
昨年8月に初めて文楽を観る機会があり、その時初めて、文楽の名のもとになった浄瑠璃芝居小屋の興行主・植村文楽軒の本名が正井嘉兵衛と知った。
「文楽の歴史」の中ほどに「文楽軒の登場」に本名「正井」とある。2.jpg
調べると淡路の仮屋の人で本籍が同じ正井一族の出身だった。
亡くなると人形浄瑠璃の関係者が多く眠る円成院に葬られ、のちに四代目文楽軒(文楽翁、正井大蔵)によって墓石が改められ、釈楽道(文楽軒)、釈妙教(妻テル)、台石には「正井氏」と刻まれる。
円成院の入口脇には、「初代文楽軒は江戸中期の人で、いわゆる文楽の芝居をおこし人形浄瑠璃興行に新時代をもたらした斯道の恩人である 文化七年(1810)没」と表記した「植村文楽軒墓所」を示す石標が建っている。3.jpg4.jpg

一族と確認してから文楽にがぜん興味が湧き、今年は久々に全段演じられる『仮名手本忠臣蔵』を観ることにした。
ところが劇場にて最初の段が演じられそれを拝見すると、ここにまた驚くべきことがあった。
この有名な演目の中に重要な役割として先祖縁者が登場していたのだ。
『仮名手本忠臣蔵』は、元禄年間におきた赤穂事件を描くが、筋書きは『太平記』の世界に仮託して描いている。播州赤穂藩主・浅野長矩は「塩谷判官」として、幕府高家肝煎・吉良義央は「高師直」として、そして塩谷判官と同僚の饗応役として、「桃井若狭助」が登場している。

全体の人間関係9.jpg
大序(第一段)から第四段までの主な登場人物10.jpg
第五段から第七段までの主な登場人物11.jpg
第八段から十一段までの主な登場人物13.jpg

大序(第一段)から第四段までの登場人物を演じた人形は、
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桃井若狭助は、以上のように物語の最初の数段に登場するが、最後の十一段「花水橋引揚より光明寺焼香の段」でも重要な役回りを演じている。
この桃井若狭助こそが、『仮名手本忠臣蔵』では南北朝時代の先祖になる武将・桃井播磨守直常の弟とされている。
桃井直常は越中守護として、室町幕府を二つに裂いた観応の擾乱と云われる足利尊氏と直義の戦いに登場するが、高祖母小杉鋹(とし)の先祖にあたる。小杉家の系図に、小杉初代の小杉伊右衛門尚芳は桃井播磨守直常から6代、桃井三郎四郎直宣嫡子とある。30.jpg31.jpg32.jpg

江戸時代の興行主といい南北朝時代の武将といい、今年の文楽劇場の3回の公演を観ている中で、まことに不思議な時間空間の中で楽しんでいる自分がいたのだった。

人形浄瑠璃は、浄瑠璃(太夫)・三味線・人形の三業が一つになり呼吸がぴったり合うとき、すなわち三位一体となるときに初めて高い芸術が生まれる。
最初から今日の形態であったわけではなく、竹本義太夫・近松門左衛門などの手によってほぼ今日の形態を整え、その後、植村文楽軒による「文楽の芝居」として従前の人形浄瑠璃が引き継がれ、数ある人形浄瑠璃の中でも大阪の中心的な存在となる。芸術として最も完成され洗練されたその伝統は、今日の人形浄瑠璃文楽座の文楽に継承されている。

文楽では一体の人形を三人で遣う特殊な演技演出法をもち、精巧細緻なこの技法は、文楽をしてわが国の代表的伝統芸能の一つとしている。
人形は、各演目の登場人物と同じだけあるわけではなく、人形の頭の部分「首」の種類は決まっていて、かつらを付けメイクをし衣装を着せて、さまざまな役を演じ分けている。「首」は男役・女役・その他とあり、国立文楽劇場では全部で40種類320点余りを所有している。
文楽の人形のうち、主要な役どころは3人で操る。中心となるのが「主遣い」で人形全体を支えると共に右手を操る。左手を操るのが左遣い、足を持つのが足遣いという。人形によっては1人で操作するものもある。

明治から昭和三十年代にかけて文楽はいくたの消長を経たが、人形浄瑠璃としての芸能伝統はよく守り今日にその正しい芸系を伝え、1955年に重要無形文化財に指定され、2003年にはユネスコの世界無形文化遺産に指定された。

参考:文化遺産データベース https://bunka.nii.ac.jp/db/heritages/detail/215359
   はじめての文楽鑑賞 http://www.amaken.jp/55/5506/

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