『 幕末維新全殉難者名鑑 』

戊辰戦争の殉難者を調べるため、1986年に出版された『幕末維新全殉難者名鑑』を見てみた。
特に関心があるのは会津藩についてなのだが、縁者の松平勇雄が名鑑の推薦者にいるのに記載には間違いが散見される。
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たとえば、
●安積運次郎 名鑑に記載漏れ。鳥羽伏見の戦いで捕虜、京都獄中で死亡。
●在竹五郎太 名鑑に記載。殉難者名籍にあり、会津墓地碑にも刻まれているが、他には出てこない。在竹清蔵と同一人と思われる。
●岩田登   名鑑に記載。戊辰殉難名簿で初登場、但し詳細不明。
●小松重兵衛 名鑑に記載し、1月鳥羽伏見役で戦死としているが、戊辰殉難名簿では8月25日か9月中に城盥川自刃とある。
●諏訪弘三  名鑑に記載漏れ。法伝寺の名簿にあり、また東軍霊名簿に正月3日伏見にて戦死とあるが、詳細不明
●林駒之助  名鑑に記載漏れ。東軍霊名簿では正月4日鳥羽にて戦死、とあるが、ほかでは詳細不明
●水野牛次郎 名鑑に記載漏れ。会津藩墓地碑に刻まれるが、ほかにはでてこない。詳細不明
●三瓶鉄蔵  名鑑に記載。一心寺の霊名簿に、慶応3年12月13日病死とある。殉難者から外すべき

そこで、他の縁者たちについても確認してみた。
幕臣で彰義隊に参加した高祖父・河島由路は、黒門口で被弾し自宅に戻って亡くなっているので記載がないのはわかる。
禁門の変で銃壁を受け自決した来島又兵衛の記述は、大体正しい。

生野義挙に参加した小山六郎は、小山の読みにわざわざ「おやま」とルビが振ってあるが間違っている。
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小山家の先祖は、因州鳥取の湖山出身の湖山耕雲斎で、8世紀に但馬に移り住み、小山耕雲斎に名を変えている。小山六郎出身の但馬山東町には集落があり、そこに住む32家のうち3家以外は小山姓で、「こやま」と名乗っている。
したがって、「こやま」が正しい。

正しい読みが流布しないと、辞典などを引くときはヒットしないことがある。
ところで、読みを「おやま」としたのがいつからなのかは分からない。
1986年発行の『幕末維新全殉難者名鑑』は、それより前の1978年発行の『幕末維新人名辞典』の「おやま」を参考にしているようだが、2010年発行の『幕末維新大人名辞典』では「こやま」と訂正されている。有難いことだ。
字としては、歌川広重が因州湖山を描いた浮世絵に「小山」とある。現地に出向いていない広重が音で字を当てたとも思われるが、江戸時代では鳥取でも「小山」と「湖山」の両方を使っていたのかもしれない。
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読みが難しい一例としては、三吉慎蔵の実家の長府藩士・小坂土佐九郎の小坂家がある。小坂家の系図に、初代は「備中国小坂村之住人」とある。現在の岡山県浅口市鴨方町小坂東、小坂西が該当する。現在は「こさか」と呼んでいる。
小坂村の前身の小坂荘について、『和名抄』では、浅口郡小坂郷を「乎佐加」と訓じている。現在「こさか」と呼んでいるので「こさか」と呼ぶ方がよいとする学者もいるが、『鴨方町史 本編』によれば、小坂は『和名抄』では「ヲサカ」と読み、刑部の字が小坂部「おさかべ」になり、その略であり、弁恭天皇の皇后の御名代であるという。
僕としては、小坂土佐九郎が自分の姓を「おさか」と呼んでいたことから、小坂荘は当然「おさか」であろうと考えている。

ついでに、『幕末維新全殉難者名鑑』について
三吉慎蔵や来島又兵衛とも親族になる船越清蔵についての間違いも指摘しておこう。
『幕末維新全殉難者名鑑』では以下のように記載されている。
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「長州清末藩士。三九郎孟正の子。・・・・京都で開塾。万延元年帰国して萩藩儒臣。文久二年八月八日反対派に毒を盛られて死んだ。五十八歳。京都霊山に墓。」
船越清蔵は、清末藩士の家に生まれた長男ではあるが清末藩士ではない。家統は妹とりに譲り、24歳で家族のもとを離れ処士となっている。
京都での開塾も間違ってはいないがそれもほんの一時で、大津塾のほうが期間も長く有名で、松門生が多く訪ねている。
安政の大獄を逃れ帰国するが、万延元年(1860)ではなく、1年前の安政6年(1859)元旦には既に萩にいる。
文久2年8月8日に毒を盛ったのは反対派というより、萩城にて藩主の前でのご進講の内容が原因で、
清蔵は、尊王の立場に立ち、藩主毛利慶親に歴史の御進講をした際に、毛利家の始祖・大江広元は朝廷を守るべき貴族でありながら鎌倉幕府を輔けて朝廷衰微の原因となった論を述べた。守旧派の萩藩士はこれに激昂し、郷土へ帰る清蔵を送ってきたときに毒を盛ったのだった。

船越清蔵の記事の左に、偶然とはいえ、安政の大獄で敏腕を振るった長野主膳が記載されているのも面白い。

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