白虎隊自刃の真相について

先日上京した折、3/16に江戸東京博物館で「八重の桜」の展示を拝見した。
第一級資料をふんだんに使った素晴らしい展示会であった。
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「白虎隊の自刃の図」も、明治2年に穂積朝春が描いた図で、会津降伏後に猪苗代謹慎所で、蘇生した飯沼貞吉から聞いた自刃の様子をそのまま絵にした第一級資料である。
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白虎隊自刃の図はその後色々な想像に任せた絵が登場するが、自刃現場を知る貞吉の証言をもとにしたものは穂積朝春の図に限定される。
その意味では、展示するにふさわしい図であり、展示の解説板も
・黒煙に包まれる鶴ヶ城は描かれていない
・隊士達は史実通りの洋装の軍装
と記述され、納得できる内容であった。

ところがである。
音声ガイドの内容は耳を疑うものであった。
展示の解説には一言もない、「飯盛山に退却してきた白虎隊士たちは、城下が火に包まれ、城が燃えていると見間違え自刃した」との主旨の説明を流している。

現場にいた白虎隊士以外にはだれも自刃した経緯を知るはずがない。その自刃理由として「城が燃えていると見間違えて、もうこれまでと、自刃した」と断定している。
この話は、現場にいない者があとから勝手に作り上げた想像の産物だ。
これをあたかも史実であるかのように、飯盛山の観光ガイドと同じように、音声ガイドで流している。

僕はゆっくりと展示を見終わってから、音声ガイドの内容を最終的にチェックしたであろう江戸東京博物館の学芸員を探してもらったが、この日は不在だった。
音声ガイドの解説について意見を言って、名刺を渡してその場は去ったが、
3月21日、音声ガイドの作成担当の方から電話をいただいた。
展示とその解説、音声ガイドの内容は、監修の先生方の意見を入れて作成しているという。おそらく全体と、得意分野ごとに監修者がいるのだろうが残念ながら先生方の名前は教えて貰えなかった

3月22日は、NHKプロモーションの方から電話をいただいた。
白虎隊の自刃についてよく勉強しているらしく、飯沼貞吉の残した「白虎隊顛末略記」についても言及があった。
5年前に発見されたこの「略記」では、白虎隊士の戦闘状況と、飯盛山に遁れてきた白虎隊士の自刃に至る理由を明かしている。
白虎隊士は、眼下に行進する滝沢街道の敵軍を衝くか、蒲生氏郷が築いた城は落ちていないので潜かに道を南にとって入城すべきか、2論を激論したが決着がつかない。そこで隊長になっていた篠田儀三郎が結論を出す。いずれの方法も隊士は十数人の少数故、誤って敵に虜にされる惧れがある。縄目の恥辱は殿に対し、また先祖に対して申訳がたたない。潔くここに自刃し、武士の本分を明らかにしようと。
そして同意した一同は城に向かい遙拝決別し、従容として自刃した。

NHKプロモーションの方は、自刃に到る理由に複数の説があることもよく理解している上で、監修の先生方に決めていただいたとのこと。
監修の先生とは、福島県立博物館の学芸員、同志社大学の関係者、その他とのことだった。

3年前に、会津若松にある福島県立博物館で、白虎隊自刃の図の変遷を明らかにする特別展示 「白虎隊の図像学」が開催された。展示は、最初に描かれた穂積朝春の図とそのバリエーション、その後多くの絵師によって描かれた二十枚ほどの絵で、白虎隊の会のメンバーと一緒に飯沼貞吉のお孫さんの飯沼一元さんの解説で拝見した。この博物館の学芸員はそれらの図が各々どういう経緯で描かれたのか歴史的な差異は十分研究し知っているはずである。
また、ここ数年の白虎隊自刃に関する有力な資料の発見についても、関連書籍、新聞報道などでもちろん知っているはずだ。2年前に飯盛山に、会津若松市長、会津弔霊義会などが参列し、除幕式が行われ、白虎隊自刃に至る真相の解説版が設置されていることも知らないはずがない。

であるにも関わらず、通説にこだわり、お涙ちょうだい式の音声ガイドの内容を認めてしまったのか、僕にはよく分からない。
城が燃え落城したと誤認し自刃したという、後世の想像の産物である「落城誤認説」は、15-6歳とはいえすでに日新館で武士の心構えを学んでいた白虎隊士を冒涜するものと思う。

自刃の図は、後期の展示では明治24年に描かれた図と入れ替えになるという。
その図の解説を前提した音声ガイドなのか、今は、納得のいく回答を待っている。

追記1:
たまたま、このブログを投稿した翌日、3月28日の日経新聞の文化欄に
白虎隊士で唯一蘇生した飯沼貞吉のお孫さん・飯沼一元さんの記事が掲載されました。
自刃の真相に触れています。
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追記2:
6/30大河ドラマ「八重の桜」の白虎隊自刃のシーンで、 「城が燃えているように見えるが、そうではない」との明確な落城誤認説を否定する白虎隊士の発言に続いて、議論を展開する場面が放映された。
これは今まで白虎隊のドラマや映画では見られない本邦初の描き方であり、とりあえず、NHKプロモーションの方には放映で答えをもらったとして感謝している。


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